2009年12月、京王=多摩バスは、バス運転士の日々の働き方の基本となる「勤務交番表」を改正し、「折返し運行待ち時間」を短縮した。会社は、運転士の賃金対象の労働時間となる「折返し運行待ち時間」を取り除くことで、合理化を図ったのである。
その結果、何が起きたかといえば、バス運転士はトイレやタバコ1本喫うのもままならないといったことは安易に想像がつく。しかしそれだけではない。利用客にどのような影響が出ているのか? すなわち、少しでも渋滞していたり、多客であったり、車イス乗車や運賃機の不具合といった車輌トラブルがあれば、次発の発車時間に間に合わないケースが以前よりも頻度を増しているではないか。これは利用者の利便性を著しく害しているのではないか。
これまで、会社は決して十全とはいえないまでも、「出庫立会い」と言う形で、何らかの運行トラブルが生じた際、これに対応するための予備の乗務員を確保していた。しかし京王=多摩バスはこれすらもやめた。故障や事故あるいは多客のための臨時便運行の対応ができない状況となったのである。
運行管理者Aは言う。「こんな勤務交番表じゃ~、人がいなくて何かあっても対応できませんよ」「所長には予備の乗務員を確保してほしいと何度も言ってるんですけど・・・」と。
現在、京王=多摩バスでは、定期便のバスからあふれて乗れなかった利用客を冬空のもと1時間待たせて、予備の乗務員がいないため臨時便を出さないということが事実起きているのである。これではバスが運行中に故障やトラブルがあったら運行ストップ、欠車である。
会社には安全にバスを運行させるという義務があり、そのために努力すべき義務がある。がしかし、この当然の事柄が京王=西東京バス=多摩バスではなされていない。トイレに行く余裕もないダイヤを作り、その結果運転士はトイレを我慢し冷汗をかきながら運行している。これはサービス向上とか接遇向上以前の問題である。
会社が進めている「安全基本方針」の実態とはこのようなものであり、運輸安全マネジメントとか言いつつ、その一環として取り組んでいるデジタルタコメーターやドライブレコーダーなども、もはやそれ以前のところに問題があると言わざるを得ない。
京王=多摩バスで生じている事故はバス運行中に乗降扉が外れ落ちたり、乗降扉の故障で乗客が挟まれ怪我をしたなどといった事故が少なくない。加えて、運行中バスが故障した際、人員不足により予備車を現地へ持っていくことすらできず対応に苦慮するといったケースはしばしばである。これらに対する苦情等は、果たして誰の責任なのか。その責任を取ったのか。所長は? 社長の丸山荘は? これらの問題について西川・黒田は指摘したのか?指摘していないとすれば、彼らもまた同じ穴のムジナであろう。
京王=西東京バス=多摩バスは、2009年10月から12月、西東京バス楢原営業所において、西東京バス運転士および多摩バス運転士を20名ほどのグループにわけて社員研修・社長懇談会を行った。この研修を担った本社サービス担当は、サービス向上の取り組みとして、江戸商人の話を交えながら「どんなお客様にも差別なく、丁寧な対応を心掛けましょう」といった内容の話をした。多摩バスのように低賃金で極限的に労働強化された労働環境のもと「バス利用者に差別なく丁寧な対応」をする余裕はあるのだろうか。疑問である。
会社の事故処理の仕方に関して言えば、明確な基準もなく、好き嫌いで差別的に判断し、適正な手続きすら無視し、運転士を処分している。処分を決定する賞罰委員会は、当該運転士の参加はおろか当該の弁明すら反映させない。いや弁明の機会すら与えない。
さらに差別的なやり口と言えばこんなこともある。路線ダイヤに組み込まれている羽田線の担当運転士の選抜方法などは、明確な基準も提示せず、恣意的・差別的に選抜している。夜行バスも同様である。
公出に関しても恩方営業所に公出希望者がいるにも関わらず、青梅営業所からの応援などといって呼び出している。実のところ青梅は「空きダイヤ」の部分に割り当てる仕業がないために恩方に飛ばしているだけではないのか。
このように京王=西東京バス=多摩バスの働き方・働かされ方は、基準そして取り決め方が不明瞭のため、仕事の割り当て方も極めて恣意的におこなわれているのである。
このような実態でありながら、会社は「どんなお客様にも差別なく、丁寧な対応を心掛けましょう」などと言う。これは運転士へ指導するというよりも、むしろ会社自身に求められるべきであり、会社自らが努力すべき事柄であろうと思うのだが。いかがか。
- 高速道路80キロ厳守の件は会社側からの通達なのか?勝手に組合が騒いでいるだけ?規制以外では100キロでいいのでは?羽田、成田が80なら夜行も同じじゃないといけないよね?夜行80じゃ予定に着かない。
時分を削られるとか言ってるけど働く側の思いや意見を本来組合は訴えなければいけないんじゃないの? - 査定にしたってそうだ!なんで無遅刻無欠勤無事故の真面目でけなげな運転士がD査定なんだよ。組合は、「それは仕方がない!誰かがC査定なら誰かがD査定になる!」だってさ!結局、おれら運転士はけ落とし逢わなければいけないのか!
- 何故、全員が100点満点で全員がA査定ではないのか?それは運転士の闘争心を利用して限られたお金を運転士同士で奪い合っているにすぎない!「点数がもらえるから公出する!」とか「正月に公出すれば5点貰える!」そんなことをしても相対評価がある限り無意味であり騙されてるだけにすぎない!組合は本当に運転士の事を考えているのなら現ダマを要求し現金にて我々に支給させるべきだ!点数をやるから正月に出てくれなんていうのは馬鹿げてる!
12月11日、運輸部長寺尾一彦は、多摩バス労働組合に対し「夜行バス乗務時の車中仮眠時間取扱い変更について」なる文面で賃金対象の労働時間である夜行バス車内仮眠時間を「非労働時間化」すると提案をしてきた。内容は、「仮眠時間は実際には労働していないものの労働時間としてカウントしている」ことが「長時間労働の原因となっている」、「このような長時間労働は昨今、行政・立法面から問題視されている」云々。ここに書かれているのはむちゃくちゃな論理と言うほかはない。とどのつまりが、一つには労働災害の適用から遁れるための非労働時間化である。二つ目は、会社が望んだ労働ではない部分を、すなわち会社にとってロスとなる部分を「非労働時間」として、このロスを労働者に転嫁させるのが狙いである。
ところで、勤務開始時間から勤務終了時間の中には「労働時間」と「休憩時間」のいずれかしかないのである。どういうことかといえば、「労働時間」でないものは「休憩時間」であるし、「休憩時間」じゃなければ「労働時間」ということなのである。もちろん問題となっている夜行バスのケースは「仮眠時間」も「賃金対象の労働時間」の扱いとするのが妥当である。しかしがら京王=多摩バスは、「非労働時間」という独特の用語を持ち込み、すなわち「労働時間」でもなく「休憩時間」でもない曖昧な表現を用いる。ここがミソである。じゃ~、この「非労働時間」とやらは「休憩時間」にあたるのか、その議論を避けるためであろうか、自ら「手当て」として払うというのである。結局、言いだしっぺがこの特有な屁理屈を押し切ることも出来ず、「賃下げが狙いです」と言っているようなものでしかない。
「スピードをモットウ」に組合活動をしているという西川・黒田執行部は、組合掲示板へ「法定速度厳守」とか「ゆっくり走ること」を促す文書を掲示している。ゆっくり走れば「折返し運行待ち時間」や「起点終点の所要時分」を会社が改善してくれるだろうとの短絡的願望を抱いてのことのようである。
いま生じている事柄の問題はそんなところにはないであろう。組合員の労働条件である労働時間の構成がどうなっているのか。まずは取り組むべき事は、12.11付、寺尾一彦提案書に対する西川・黒田なりの見解を全組合員に明らかに示すことである。