この間、会社は、バス運転士の労働条件であるバスの運行スケジュール(ダイヤ)の編成に際して、八王子駅向けの経路を高尾駅向けの経路に変更したり(陣馬高原下、美山町、小津町等)、起点から終点の所要時間(分)を変更したり、折返し運行待ち時間の短縮をおこなってきた。
2010年4月のダイヤ改「正」では、既存バス路線のルート変更やバス停増設などして、さらなる見直しをおこなった。言ってみれば、運転士にとってはますます忙しく厄介なダイヤとして変貌したのである。
現場運転士のあいだでは「ダイヤ改「正」は何のためにやっているの?」「ダイヤ改「正」のたびに俺たち運行しずらくなってなぁーい?」と多々疑問の声があがっている。
さらに、度重なる年間2回のダイヤ改「正」が直接の原因かどうかはともかくとして、運転士の職位が上がればわずかであれ増えるはずの賃金の手取りが増えていないのはなぜなのか・・・(ごく一部の運転士をのぞいて(!!))
参考までに、多摩バス運転士Tさん〔家族4人(子供2人)〕
の場合、月あたりの生活費は次のような感じである。
- 家のローン65000円
- 車のローン16000円
- パソコンのローン12000円
- 生命保険、夫7000円、妻5000円
- ガソリン代、灯油代28000円
- 電気代7600円
- 水道代13000円(2ヶ月分)
- ガス代15000円
- 携帯電話代(2台)15000円
- 自宅電話代、インターネット代8000円
- 小学校給食費(2人)8000円
- 子供の習い事代(2人)14000円
- NHK料金4580円(2ヶ月分)
- 食費30000円
- 雑費(衣服等)20000円
これらを合計すると26万8180円となり、水道代とNHK代を1ヵ月分で計算し、8790円を差引いても、月あたりの必要生活費は25万9390円である。ここには夫や妻の小遣いなどは含まれていない。いま、多摩バス労働者の賃金だけではとてもじゃないけれど生活して行けないという状況にある。
「会社あっての労働組合」論にしがみついている西川・黒田執行部は2010年3月10日、今春闘要求と思われる多摩バス労働組合としての要求書を会社に提出した。
要求項目は、
- 一時金を支給すること。
- 交通費を支給すること。
- 生活奨励金の支給基準の緩和とポイントアップをすること。
- スポーツ施設その他の福利厚生制度の充実をすること。
- 車両乗り終り時間現行5分を10分に変更すること。
である。
この要求項目の中には、昨年行われた組合大会の席上西川・黒田執行部が約束した「ベースアップ(賃上げ)」の要求が含まれていない。なぜか? 西川・黒田執行部は、「会社の経営状況が悪い」「この世の中、賃上げ要求する時代ではない」「西バス労組がやらないからやらない」「会社あっての労働組合(労働者)」「雇用の確保優先」などと言っては組合員を誤魔化している。加えて、会社の総人件費削減のためのキャンペーンと同調・一体化し、増務(基準外労働)を抑制させるために「増務をしないでも生活できるように生活を切り詰めろ」「生活水準を下げろ」などと言っては組合員を恫喝している。
すでに前号<かわら版>でも訴えているが、長時間労働の問題は、主要には、多摩バス運転士(および新採用の西東京バス運転士)の時間単価が低いことが問題であり、だからこそ、生活に必要な生活費を得るために長時間労働をせざるを得ない実情にあえいでいるのである。誰一人として好きこのんで長時間労働するものはいないのである。しかも、本来、賃金対象の労働時間さえも「非労働時間」として除外されていることが問題なのである。
この点について、組合大会では、組合員の切実な思いが語られ、これを受けて、具体的なベースアップ要求をしていくことになっていたはずである。
にもかかわらず、一部の執行委員ないし一部の代議員が組合の運営において、他の代議員や組合員の意見を無視して独断専制に行うということは、組合民主主義の原則にも反している。異様な光景である。
西川・黒田の「雇用の確保」という表現はそもそも労働者側が使う言葉なのか疑問である。2010年経労委報告において経営側は「雇用の確保・安定・創出」とか「民間企業は従業員が活動を支えている」とか「「ヒト」を大切にする日本的経営に磨きをかけ、労使相互の信頼関係のもとで健全な労使関係の深化を図っていくことが肝要」などと報告している。
しかしながら、今春闘では「雇用確保」「総人件費管理」徹底の方便でベアゼロはおろか「定期昇給凍結」の構えである。また、「最低賃金の見直し」においても「生産性を引き上げない限りやるべきでない」などと言っている。
これはどういうことかというと、「雇用確保」というともっともらしく聞こえなくもないが、この言葉の裏には「仕事を与えるだけマシであり、クビにしないだけありがたく思え(!)」「だから合理化をのんで安い賃金でガマンしろ(!)」といったなんともエゲツない合理化攻撃があり、「雇用確保」という表現の真の狙いは安価な労働者をつくり出すことにあるのである。
西川・黒田がカシコぶって「雇用の確保」と叫ぶのは無知なるがゆえのなせる業と言えなくもない。
ところで人が人に抱くイメージというのは様々であるが、具体的な社会問題に取り組む時には「あいつは無能だ」とか「あいつは優秀だ」とレッテル張りしてみたところで無意味である。仮に組合幹部であれば「スゴイ人」とか「優れた人」といった勝手なイメージを抱きがちである。いや、私たちは実際に抱き、そう思ってきた。しかしこれは大きな誤算であった。
肝心なのは西川や黒田は多摩バスで働く労働者に具体的に何をしたか、である。何をしたかという事実を離れてイメージから眺めてみても意味のないことであり、イメージから「無能だ」「優秀だ」といったレッテル張りも意味のないことなのである。
京王グループ西東京バスでは非人間的に差別・階層化された非正規労働者は増加の一途を辿っている。会社は「雇用確保」「企業内労使協調」「生産性向上」という名のもとに労働強化と労働条件の全面的改悪、合理化を行い、これまでもダイヤ改「正」では過密ダイヤによる労働強化を行ってきた。早朝・深夜バス運行の時間帯を早めたり延ばしたりと営業時間を延長し、月当たりの基準外労働は過労死認定基準である100時間をはるかに上まわる150時間をも超えている。
このような無限定・無規則な働き方・働かされ方を産み出したばかりでなく、過密になるということは所要時間を短縮し運行を行うことであり、運転士はトイレも行けず冷や汗をかきながら連続運行しなければならないといった状況にもなっている。
会社は「コスト削減」「無駄をなくす」と言いながら、実際問題そこでやっていることは、同じ時間の幅で今まで以上にコキ使っているのであり、実質的には賃下げしているのと等しいのである。
一方、人の輸送という人命に関わる問題である安全面に関係する「コスト」すら会社は利益追求という至上命題のもと「コストダウン」を行っている。現に今年1月5日早朝、路面凍結による事故多発は象徴的である。積雪等異常気象時であったにも関わらず、エンカリ撒きや路線状況の把握など一切行わなかった。つまりは過剰な「コストダウン(人減らし)」により予備要員を廃止し、身動きが取れなかった。しかも断じて許せないのはこの多発事故につき、会社は自らの安全管理の杜撰さを深く反省するどころか「プロドライバーであることを肝に銘じ」ろ! などと運転士を恫喝していることである。さらに言えば、会社は事故を評価制度に組み入れ、「マイナス評価」することで減給するなどして、事故を運転士個人の責任にすり替え、安価な労働力を作るための技巧として評価制度を悪用している。
さぁ、考えよう。
会社は、僕たち私たちをどうしたいのか。
組合幹部たちは、僕たち私たちをどうしたいのか。
僕たち私たちは、どこへ向かおうとしているのかを――。
- 労働強化もここまでくると悲惨で組合の存在が疑われます。それでいて西バス労組と多摩バス労組合併と来たら手の平の中コロンコロン・・・。
- この間無記名労組合併賛否用紙、もうトックに集計出たはずなのに組合掲示板に結果が出てません。否の方が多かったのかな? 賛の方なら何時から! 疑問です。
- バス停の数を増やすと言うことはそれだけ又責任と仕事が増えて辛い思いするのは運転手だけ!置いていけば減点! 遅れてけばマイクで案内! 新設案内! 二つ以上の系統が走るとこなら、誤乗車しないよう案内!車内外事故で事情聴取! バス停増運転手に責任重大、恩方の諏訪神社と日吉町一丁目会館北だって日が経てば適当に乗降は見込める? けれど一人ぼっちの乗降が当たり前のとこばかり・・・。多摩バス仕業恐るべし体壊しました。
- 先日のチームミーティングで吉田所長は「こういった場では批判的な言動は場の雰囲気を悪くするだけだから止めて欲しい」と。これでは何の為の場だか分からない。また、「制服着用の乱れが目立つが、規律の乱れにも繋がるので厳しく対応する」と。何が規律だ! 規律が乱れる様な劣悪な環境に運転士を置いているのは会社ではないか!
- 廿里上のバス停は渋滞した場合、後続のバスは坂道発進でリスクは上がると思う。またダイヤ改正で折り待ち時間削られれば運転手のイライラは増えるし接遇向上など出来るわけないですよね。