9月中数日間行われた職場集会の席上、西川黒田執行部は組合員に対しておよそこんなふうに訴えた。
「私たち多摩バス労働組合だけではもう限界です…会社は労働条件の変更について、私たち(西川黒田)、執行部に何ひとつ提案もせずに、決定事項としての通知しかありません…この先、多摩バス労働組合が今のままでいても意味がないと思います…西東京バス労組と統合すれば労働条件が向上することについて望みが出てきます…統合するなら今しかありません…重責である副委員長ポストとその他執行委員ポスト2つを西東京バス労組は用意してくれるのは今だけです…」と。
「決定事項の通知しかありません」と言うが、実のところ「決定事項の“通告”しかない」というべきだろう。組合員から「それに対して何をしたのか?」の問に西川黒田執行部は「“おかしい”と伝えました」と応答。
この職場集会には西東京バス労組田辺書記長も出席したのであるが、この田辺書記長には、組合員から種々の質問が行われた。
「組合統合について多摩バス労組から何も知らされていないのに西バス労組職場集会で具体的に解散の話が出たのはどういうことなのか」「組合統合以前に庄司メール問題はどうなっているのか。それもやらずに統合の話にはならない」等々。
時折り返答に困った田辺書記長は「すみません…多摩サンの問題は勉強不足でしてわからない点も…」ととぼけてみたり、そうかと思えば、ほとほと困ったふうな装いで「私たちのやっていることは労働運動としては間違っています…」などと返答する場面もあった。
組合統合に向けての職場集会で「(私たちの労働組合は)労働運動としては間違っています」とのことである。仮にそう自覚しているのだとしたら、何についてどのように間違えているのか、まずもって明らかにする必要がある。つまりそれ自体、労働組合を構成している組合員の利益に関わる重要な事柄であり、決して無関心ではいられないからだ。組合員は組合費を納めるためだけの「組合員は…“スポンサー”…」(庄司メール)ではない。
振り返ってみれば、これまで西東京バス労働組合一部執行部は、会社提案である合理化を認め続けてきた(この間の西東京バス定期大会議案書はぜひとも参照していただきたい)。すなわち、
- 分社化を認め、
- 違法状態でのバス営業運行を認めてきた。
- 事故が多発するほどの悪辣極まりない労働環境である多摩バス会社を認め、
- そればかりか西東京バス労組はその後も安価な労働力である新採用西東京バス運転士を、しかも同じ組合員の中に別基準(差別的基準)で認めてきた。
- 労働者管理のための多額の設備投資である、車内カメラ(ドライブレコーダ)やデジタコの導入はその運用について多々疑問の声が上がっているがこれらを認め、
- 工場労働者の所定労働時間も低賃金でありながら延長した。
- さらに現在に至っては高速バス運転士の地方採用についても、ますますというべきか安価な労働力としての地方労働者の採用をあっさりと「認めさせてもらいました(職場集会における田辺勉談)」と言う―――。
西バス労組が「労使協調」という名のもと次から次へと会社提案を認めてきた(西川・黒田も同様)この10年間において、一体何がどのように変わったのだろうか。すなわち、同一資本のもとで働く労働者間において、賃金の差別化だけではなく、働き方・働かせ方において、「基準」という「基準」がズタズタに破壊され、矛盾に満ちた労務政策がおこなわれているのが現状である。
8月から支払われた「通勤費」(多摩バス会社はこれまで交通費を支払っていない)についてもその支払い方法は西東京バスと多摩バスでは差が生じている。出向規定で定めている「通勤費は出向先に準ずる」に違反し、西東京バスに支払ってきた期間につき多摩バスでは支払っていない。そもそも「月」当たり数百円ぽっちで「通勤費」なのか!?原付バイクでも一回満タンにできるかどうかだ。
結局のところ、西川・黒田執行部及び西バス労組田辺書記長は、組合統合に関する現場労働者の働き方・働かされ方のあらゆる矛盾について、これを組合員が吟味・検討するための具体的判断材料は何ひとつとして示さず「統合してから考えます…」と言うのみであった。
今年の猛暑始まる7月2日のこのことである。「階段でつまづき足を重傷(会社掲示文書)」と公傷で欠勤していた庄司航は、翌3日、エルシィービアガーデンで他執行部らとともに会社本社連中と酒を交わしていた。毎度のことながらホテルや料亭で会社と酒を交わしながら己の将来の安泰でも乞うていたのだろうか。「決定事項の“通告”しか出さない」会社連中とどんな話をしているのだろうか、わからない。
西東京バスと多摩バスでは労働時間を構成する基準が違う。多摩バスには「労働時間」の基準がないから、「○休」などといった意味不明(違法)の休憩がある。同じ会社で同じバスの運転をしているのだから、「同じ基準」での働き方を求めるほかはない。
西東京バスと多摩バスとでは賃金制度はおろか評価制度が異なり、評価の基準も違う。かといって、この点を曖昧にしていたら今後も会社の恣意的な評価が横行することとなり、差別的不合理な働き方・働かされ方が改善することはないだろう。
2010年9月2日、43ダイヤ12時10分繊維団地発京王八王子駅行を運行していたY運転手のバスに丸山荘社長が添乗し、添乗報告としてY運転手に次のようなクレームを入れた。
- 「“7分も遅れているのになんで扉をすぐに開かないのか”と言ってるお客様がいた」、
- 「エコドライブを口実とした意図的遅延行為である」、
- 「…自販機で購入している人を待つ」、
- 「肉声アナウンスを自動放送にかぶせた」等々。
丸山荘社長は彼自身の添乗結果報告を通して、Y運転手の接遇に関してクレームを付けたが、そのクレームその一つ一つを吟味すれば、事実認識の上で誤っており、従ってそのクレームもまた方向ちがいであり、これはこの多摩バス会社における添乗評価制度が極めて恣意的であり合理的客観的評価とは無縁であることを社長自身が鮮明に物語っているに等しい。
運転技術に関して言えば、Y運転手が停留所に近づき歩いていた人を乗客かも知れないと思い停車したところ、その人は停留所側の自販機で飲料水を購入するためであった。
この件につき、丸山荘社長はおよそこんなクレームを付けた。
- 自販機で飲料水を購入するだけのことであり、その人がバスに乗る人でないことぐらい、ベテランの運転手なら素早く見極めることができるだろう。
- たとえ一旦停留所で停車させたとしても、ベテラン運転手ならバスに乗る人かどうかを素早く見極めることができるのだから、わざわざドアを開けてマイク案内をする必要はなかっただろう。
この丸山荘社長のクレームは現在の評価制度の運用とあまりにもかけ離れている。この停留所に近づいてきた人を乗客でないとY運転手が一方的に判断し通過した場合、仮にその人がバスに乗る予定だったならば必ずやクレームが生じただろう。このようなケースの場合、運転士が一方的に判断したことのみが非難の対象となり、弁解の余地なしである。さらに言えば、一旦停車した限り、ドアを開けマイク案内することも評価制度上求められていることであり、これを欠けばマイナス評価である。
この多摩バスにおける評価制度が種々の矛盾を抱えているのも事実であるが、それはともかく、具体的にどのように運用されているのか、この点につき社長たる丸山荘が把握していないことには驚く。
- 「西東京バスにはダイヤ編成基準がある。多摩バスに基準はない」
- 「折返し運行待ち時間が多摩バスは○休だけど、西バスは労働時間としてカウントされている、なぜ?…中休手当ても多摩バスはない…」
- 「西東京バスは一日の所定労働時間は7時間50分。多摩バスの一日は16時間で所定労働時間という基準がない…」
- 「西東京バスと多摩バスは評価基準が違うじゃないか、多摩バスには基準がないも同然であり、あまりに不合理…」
- 「接遇評価は、西東京バスと多摩バスとの間で基準が曖昧不明瞭(一言でいうと甘い辛い)である」
- 「そもそも添乗結果が賃金に与える影響が違う。評価制度が異なるため、同じ点数であっても西東京バスでは賃金にあまり影響を受けないわけだけれども、その反対に多摩バスの接遇評価は制度上、業績年俸や昇給に大きく影響する」
- 「西東京バスは、表彰制度があるが多摩バスにこのような基準はない。接遇評価されると金一封。その他にも永年勤続表彰や優良運転者表彰として社長表彰、部長表彰もある」等々。
9月18日、合同労組八王子と三多摩労組交流センターは、2007 年に不当解雇されたNさんの解雇撤回を求めて、西東京バス恩方営業所と西バス本社に、抗議の申し入れを行った。試雇期間とはいえ、簡単にクビにされてたまるか!多摩バスは設立以来、入社した400人中180人も退職に追い込んだあくどい企業だ。労働者をなめるんじゃない! 解雇撤回の気迫のこもったシュプレヒコールが叩きつけられた。